ユートピア 湊かなえ
”ユートピアを求める人は、自分の不運を土地のせいにして、
ここではないどこかを探しているだけだ。永遠にさまよい続けていればいい。”
あらすじ
舞台は海辺の田舎町。五年前にそこで起きた殺人事件と子供の友情、大人たちの思惑がだんだんと絡んでいくストーリー。
相手を勘繰る大人たちの心理描写がリアルで、湊かなさんの作風が十分表れている小説だと思います。
感想
この作品の中では、子供と大人の心理が対比されながら描写されています。
子供たちのますっぐで、時に残酷な面をみせるほどの素直さ。
対して、常に他をうらやむ大人たちの欲深さ。
そして最初に引用した、
”ユートピアを求める人は、自分の不運を土地のせいにして、
ここではないどこかを探しているだけだ。永遠にさまよい続けていればいい。”
この言葉からも分かるように、一見、作者は大人たちが欲深くユートピアを求め続けることを子供との対比によって、批判し、つきはなしているかのように思えた。
しかし物語のラスト数ページ、作者がユートピアを求めることを認めてくれていることを気づいた。
「欲深いことはよくないことかもしれないけど、人間としてしょうがないものだよね。」こんなやさしさを感じた。
読んでいただきありがとうございます。